多発性骨髄腫とは何か ― 血液検査の異常から見つかることがある病気を、正確に理解するために ―
多発性骨髄腫とは何か ― 血液検査の異常から見つかることがある病気を、正確に理解するために ―
[2026.01.22]
健康診断や血液検査の結果をきっかけに
「多発性骨髄腫(たはつせいこつずいしゅ)」という聞き慣れない病名を知り、不安になって検索してこのページにたどり着いた方も多いと思います。
この病気は、正しく理解すれば、必要以上に恐れるものではありません。
一方で、誤解や断片的な情報によって、過剰に心配してしまう人が多い病気でもあります。
この記事では、
多発性骨髄腫について
- そもそも何の病気なのか
- なぜ血液検査で見つかるのか
- どのように診断され、どう考えて治療されるのか
を、医学的に正確な範囲で、一般の方にもわかる言葉で整理して解説します。
多発性骨髄腫とは何か
多発性骨髄腫は、血液のがんの一種に分類される病気です。
ただし、ここで言う「がん」は、
胃がんや肺がんのように「臓器にしこりができる病気」とは性質が異なります。
どの細胞の病気か
多発性骨髄腫は、**形質細胞(けいしつさいぼう)**という細胞が増えすぎてしまう病気です。
形質細胞は、私たちの体を感染症から守るために必要な
抗体を作る細胞です。
本来は、
- 必要なときに増える
- 役目を終えたら自然に減る
というバランスが保たれています。
しかし、この形質細胞が異常に増殖し、
同じ抗体を大量に作り続ける状態になると、多発性骨髄腫と呼ばれます。
骨髄と免疫の基礎知識
骨髄とは何か
骨髄は、骨の中にある柔らかい組織で、
- 赤血球
- 白血球
- 血小板
といった血液の細胞を作る「工場」のような役割をしています。
この骨髄の中で、
Bリンパ球という細胞が成熟すると、形質細胞になります。
形質細胞と抗体
形質細胞の仕事は、
- 侵入してきたウイルスや細菌を認識する
- それに対応する抗体を作る
という、免疫の中核を担う役割です。
抗体は本来、
- 種類がたくさんあり
- 必要に応じて作られる
ものですが、多発性骨髄腫では、
- 同じ抗体だけが大量に作られる
- しかも役に立たないことが多い
という状態になります。
なぜ多発性骨髄腫が起こるのか
現時点でわかっていること
多発性骨髄腫の発症原因について、
明確な単一の原因は分かっていません。
ただし、以下のことが関係していると考えられています。
- 形質細胞の遺伝子異常
- 加齢に伴う免疫機構の変化
- 長期間にわたる免疫刺激
わかっていないことも重要
重要なのは、
- 食事
- 生活習慣
- 性格
といった個人の努力や行動が直接の原因とされているわけではないという点です。
「何か悪いことをしたから起こる病気」ではありません。
多発性骨髄腫の主な症状
多発性骨髄腫の症状は、人によって大きく異なります。
また、症状がまったくない段階で見つかることもあります。
貧血
骨髄が形質細胞で占拠されると、
赤血球が十分に作れなくなり、貧血が起こります。
- 疲れやすい
- 息切れ
- 動悸
といった症状につながることがあります。
骨の症状
多発性骨髄腫では、
- 骨を壊す細胞の働きが強くなる
ため、
- 腰痛
- 背中の痛み
- 軽い衝撃で骨折
といった症状が出ることがあります。
腎機能障害
大量に作られた異常な抗体は、
腎臓に負担をかけることがあります。
- クレアチニンの上昇
- 尿検査異常
などで気づかれることもあります。
感染症にかかりやすくなる
抗体の質と量のバランスが崩れるため、
免疫機能が低下し、感染症にかかりやすくなることがあります。
血液検査・検尿で見つかる異常
M蛋白とは何か
多発性骨髄腫で最も特徴的なのが
**M蛋白(エムたんぱく)**の出現です。
M蛋白とは、
- 1種類の抗体が
- 異常に大量に作られたもの
を指します。
健康診断で、
- 総蛋白が高い
- アルブミンとのバランスがおかしい
といった所見から、精密検査につながることがあります。
その他の検査異常
- 免疫グロブリンの異常
- カルシウム値の上昇
- 腎機能異常
- 尿中の蛋白異常
などが組み合わさって見つかることもあります。
診断までの流れ
多発性骨髄腫の診断は、1つの検査だけで決まるものではありません。
血液検査
- M蛋白の有無
- 免疫グロブリンの種類
- 貧血や腎機能の評価
を行います。
尿検査
尿中に抗体の一部が出ていないかを確認します。
画像検査
- レントゲン
- CT
- MRI
などで骨の状態を評価します。
骨髄検査
骨髄中の形質細胞の割合を確認し、
診断を確定します。
MGUS・くすぶり型との違い
MGUS(意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症)
- M蛋白はある
- しかし臓器障害がない
状態です。
くすぶり型多発性骨髄腫
- 多発性骨髄腫に近い状態
- ただし、すぐに治療が必要とは限らない
これらは経過観察が基本となることが多く、
「見つかった=すぐ治療」ではありません。
治療の基本方針(日本基準)
治療は、
- 症状の有無
- 臓器障害の程度
- 年齢や全身状態
を総合的に判断して決められます。
主な治療の考え方
- 薬物療法
- 必要に応じて造血幹細胞移植
などが組み合わされます。
治療効果や経過には個人差が大きいため、
一律に語ることはできません。
予後・経過についての考え方
多発性骨髄腫は、
- 長期的に経過をみていく病気
として捉えられています。
数字だけで将来を判断することはできず、
その人ごとの病状の進み方を見ながら対応していくことが重要です。
よくある誤解
- 健康診断で異常=すぐ深刻な病気、ではない
- 痛みがない=問題ない、ではない
- 数値だけで病気は決まらない
という点は、ぜひ知っておいてください。
まとめ
多発性骨髄腫は、
- 血液と免疫の病気であり
- 早期に見つかることも多く
- 状態に応じた慎重な判断が行われる
病気です。
正確な情報をもとに、
必要な検査と適切な受診判断を行うことが大切です。
参考文献(エビデンス)
- 日本血液学会「造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版(2024年版)」多発性骨髄腫の章
- Kyle RA, Rajkumar SV. Multiple myeloma. N Engl J Med. 2004;351(18):1860-1873.
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※2026年9月23日 訂正:参考文献の表記を確認し、誤りを修正しました。